単孔類のなかま
カモノハシを初めて見た人は、きっと「これは何の動物?」と迷ってしまうでしょう。カモのようなくちばし、ビーバーのような尾、そして全身をおおう毛。ところが、この不思議な姿をした動物は、れっきとした哺乳類です。
しかも、普通の哺乳類とは大きく違います。なんと卵を産み、母親が乳を与えて子どもを育てるのです。カモノハシとハリモグラは「単孔類」というグループに属し、卵を産むという珍しい特徴を今も受け継いでいます。
カモノハシ
カモノハシ目(単孔目) カモノハシ科 カモノハシ属
学名 Ornithorhynchus anatinus
英名 Platypus
- 体長 オス約40~63cm、メス約37~55cm
- 体重 オス約0.8~3kg、メス約0.6~1.7kg
- 分布 オーストラリア東部、タスマニア
- 生息地 川、湖などの淡水域
- 食べ物 水生昆虫の幼虫、エビ、オタマジャクシなど
- 寿命 約20年生きる個体もいる
カモノハシは水辺で暮らし、水の中に潜って食べ物を探します。普段は川岸の巣穴などで休み、夕方から夜に活動することが多い動物です。
カモノハシの分布

カモノハシが暮らしているのは、オーストラリア東部とタスマニアです。北のクイーンズランド州から南のビクトリア州まで、かなり広い範囲に分布しています。
ただし、どこにでもいるわけではありません。生活の中心となるのは川や渓流、湖などの淡水域。川岸に土や植物があり、水の中に小石や砂利があるような場所が、カモノハシにとって暮らしやすい環境です。
【生息地】川・湖・池などの淡水域
カモノハシの特徴
体の大きさ
カモノハシはオスのほうが大きく、体長はオスで約40~63cm、メスで約37~55cmほどです。体重もオスのほうが重く、約0.8~3kg、メスは約0.6~1.7kgほどになります。
体は細長く、水の中を泳ぎやすい形をしています。平たい尾や短い足も特徴的で、見た目は少し変わっていますが、川の中で暮らすための体のつくりがしっかりそろっています。
体は水の中を泳ぐのにぴったり
カモノハシの体を見ると、水の中で暮らすための工夫がたくさん見つかります。体は細長く、全身は水を通しにくい毛でおおわれています。冷たい水の中でも体温を保ちやすいようになっています。
そして、後ろには幅の広い平たい尾があります。尾には脂肪を蓄えることができ、泳ぐときには体のバランスを取るのにも役立ちます。
「くちばし」は何のため?
カモノハシといえば、やはり大きなくちばしです。でも、鳥のくちばしとはまったく違います。柔らかな皮膚でできていて、触ったものを感じ取るための感覚器官が集まっています。
水の中に潜ると、カモノハシは目や耳、鼻の穴を閉じます。見えない、聞こえない状態でも、くちばしを使って川底を探り、食べ物を見つけることができるのです。
水中の「電気」までわかる!
さらに驚くのが、くちばしにある特殊な能力です。カモノハシは、水中の獲物が筋肉を動かしたときに出す、とても弱い電気を感じ取ることができます。
水が濁っていて、目で獲物を見つけにくいときにも、この能力が役立ちます。カモノハシにとって、くちばしは単なる口ではなく、水中の世界を探るための大切なセンサーなのです。
泳ぐだけでなく、土も掘る
前足には大きな水かきがあり、水をかいて進むのに使います。一方、陸に上がると水かきを折りたたみ、足の爪を使って土を掘ることができます。
つまりカモノハシの足は、「泳ぐ」と「掘る」という、一見まったく違う仕事をこなせるのです。川で暮らし、川岸に巣穴をつくる生活にぴったりの足といえます。
オスの足には秘密がある
かわいらしい姿からは想像しにくいことですが、オスの後ろ足には鋭いけづめがあります。しかも、このけづめは毒腺につながっています。
繁殖期のオスに特に発達するこの毒は、人が受けると強い痛みを感じることがあります。カモノハシは見た目だけではわからない、意外な一面も持っているのです。
カモノハシの生態
何を食べるの?
食べ物は水生昆虫の幼虫を中心に、エビや水生昆虫、オタマジャクシなどさまざまです。くちばしで川底を探りながら、小さな生き物を見つけていきます。
捕まえた獲物は、すぐには食べません。ほお袋に入れて水面まで運び、浮かび上がってから食べます。水の中で食べるのではなく、いったん「食料をためてから食事」という方法をとっているのです。
夕方になると動き出す
カモノハシは一年中活動しますが、夕方や夜に活発になることが多い動物です。昼間は川岸の巣穴などで休み、あたりが暗くなってくると水の中へ向かいます。
水中では何度も潜りながら、川底を探って食べ物を集めます。静かな水辺で暮らすカモノハシは、人の前に姿を見せることがあまりありません。
川岸の巣穴で暮らす
水中で食べ物を探しているカモノハシですが、ずっと水の中にいるわけではありません。川岸の土手などに巣穴を掘り、そこを休む場所として利用します。
メスが子育てするときには、さらに複雑な巣穴をつくります。水辺に巣穴があることで、泳いで食べ物を探す生活と、陸上で子どもを育てる生活をうまくつなげています。
卵から生まれた子どもは乳で育つ
カモノハシのメスは、1~3個ほどの卵を産みます。卵を温めて子どもが生まれると、今度は母親の乳で育てます。
ここでもカモノハシには驚きがあります。母親には乳首がありません。腹部の皮膚から乳が出て、子どもは毛についた乳などをなめて飲みます。卵を産むのに、子どもを育てるときは哺乳類らしく乳を与えるのです。
カモノハシの天敵
カモノハシは水中や巣穴で過ごす時間が長いため、天敵に狙われにくいと考えられています。それでも、ワニやオオトカゲ、ヘビ、ワシ、大型の魚などに襲われることがあります
陸上や浅い場所では、キツネやイヌなどにも注意が必要です。また、野生では天敵だけでなく、釣り糸や仕掛けに絡まる事故も問題になります。
カモノハシを守るために
カモノハシが生きていくには、魚が泳ぐ川だけあればいいわけではありません。食べ物を探せる川底と、巣穴を掘れる川岸、その両方が必要です。
ダムなどによる川の環境の変化、開発や水質の悪化、干ばつなどは、カモノハシの暮らしに影響する可能性があります。釣り糸などを水辺に残さないことや、川岸の自然を守ることも大切です。
まとめ
カモノハシは、見た目だけでも十分に不思議な動物です。でも、本当に驚かされるのは、その体と暮らしの仕組みです。
水の中では目や耳を閉じ、くちばしで電気まで感じ取りながら獲物を探します。そして川岸に巣穴を掘り、卵を産んだあとには母親の乳で子どもを育てます。
「カモのようなくちばしを持つ、変わった動物」だけでは終わらないのがカモノハシです。知れば知るほど、哺乳類の中でも特別な存在であることがわかります。