カンガルーのなかま

カンガルーのなかまは、オーストラリアやニューギニア島を中心に生息する有袋類で、世界には約75種類が知られています。
一般的に、大型の種類を「カンガルー」、中型を「ワラルー」、小型を「ワラビー」と呼びますが、明確な分類上の違いではなく、主に体の大きさによる呼び分けです。
どの種類もお腹に育児のう(袋)を持ち、未発達な赤ちゃんを袋の中で育てるという共通した特徴があります。また、強力な後ろ足と長いしっぽを使ってジャンプで移動する姿は、オーストラリアを代表する動物として世界中で知られています。
ここでは、代表的なオオカンガルー(ヒガシハイイロカンガルー)とアカカンガルーを紹介します。
アカカンガルー

カンガルー目(有袋目) カンガルー科 カンガルー属
学名 Macropus rufus
英名 Red Kangaroo
- 体長 オス130~160cm メス80~110cm
- 尾長 65~120cm
- 体重 オス85kg メス35kg
- 分布 オーストラリア西部~中央部
- 生息地 草原、半砂漠、低木林
- 食べ物 草
アカカンガルーは、現生するカンガルーの中で最も大型の種類です。乾燥した内陸部に適応しており、長距離を効率よく移動できる優れた跳躍力を持っています。
オスは赤茶色の毛色をしていますが、メスは灰色を帯びることが多く、同じ種類でも性別によって見た目が異なります。また、繁殖期になるとオスの胸や首の皮膚から赤みを帯びた分泌液が出て、毛がより赤く見えることがあります。

オスの喉や胸部からは、赤い液が分泌されているんだ。その赤い液で体の毛が赤く染まるんだよ。
オオカンガルー(ヒガシハイイロカンガルー)

カンガルー目(有袋目) カンガルー科 カンガルー属
学名 Macropus giganteus
英名 Eastern grey kangaroo
- 体長 オス100~140cm メス85~120cm
- 尾長 45~100cm
- 体重 オス65kg メス30kg
- 分布 オーストラリア東部・タスマニア島
- 生息地 草原、半砂漠、森林
- 食べ物 草
オオカンガルーは、アカカンガルーに次いで大きな種類で、「ハイイロカンガルー」と呼ばれることもあります。全身は灰色の毛で覆われ、森林から草原まで幅広い環境に適応しています。
活動が活発になるのは朝夕の涼しい時間帯で、危険を感じると時速55~60kmで走りながら大きくジャンプして逃げます。群れで生活することが多く、開けた草原では十数頭以上の群れを見ることもあります。
カンガルーの分布

カンガルーはオーストラリア全土に広く分布していますが、種類によって暮らす地域が異なります。
オオカンガルー(ヒガシハイイロカンガルー)は、雨が比較的多いオーストラリア東部とタスマニア島に生息し、草原や森林などの環境で暮らしています。
一方、アカカンガルーは、雨の少ないオーストラリア西部から中央部の乾燥した地域に多く生息しています。半砂漠や低木林にも適応し、厳しい環境の中でも生活できるよう進化しました。
【生息地】草原・半砂漠・森林・低木林
カンガルーの特徴

体の大きさ
カンガルーは種類によって大きさが大きく異なります。
世界最大のアカカンガルーのオスは体長160cm、体重85kgほどになり、尾で体を支えて立ち上がると、人の身長を超えることもあります。一方、オオカンガルーはやや小柄ですが、筋肉質な体と強力な後ろ足を持ち、高い跳躍力を発揮します。
どちらの種類も長く太いしっぽを持ち、ジャンプするときのバランスを取るだけでなく、歩くときには体を支える役割も果たしています。
オスとメスの違い

アカカンガルーは、オスとメスで体の大きさや毛の色が異なります。
オスは赤茶色の毛で体が大きく、胸や腕の筋肉が発達しています。一方、メスは灰色を帯びた毛色をしていて、体はオスより小さく、お腹には赤ちゃんを育てるための育児のう(袋)があります。
動物園では、体の大きさや毛の色、袋の有無に注目すると、オスとメスの違いが分かりやすくなります。
お腹にある大きな袋

カンガルー最大の特徴といえば、お腹にある大きな袋「育児のう」です。
有袋類であるカンガルーは、赤ちゃんをお腹の中で長く育てるのではなく、とても小さな状態で出産し、その後は袋の中で育てます。
袋の入り口は上を向いていて、立ったままでも赤ちゃんが落ちないようになっています。また、袋の内側には4つの乳首があり、赤ちゃんはそこでお乳を飲みながら成長します。
種類によって多少異なりますが、袋は成長した子どもでも入れるほど大きく、伸縮性にも優れています。
袋の中はくさいの?
「赤ちゃんはずっと袋の中で生活しているけれど、袋の中はくさくないの?」と思う人もいるかもしれません。
赤ちゃんは袋の中で排せつもしますが、お母さんは袋の中を舌でていねいになめて掃除します。そのため、袋の中は意外にも清潔に保たれています。
さらに袋の内側には汗腺がほとんどなく、湿気がたまりにくいため、赤ちゃんが快適に過ごせる環境になっています。
袋の中ではどうやって入っているの?
袋の中の赤ちゃんは、狭い場所に無理やり入っているわけではありません。
成長するにつれて体を器用に折り曲げ、頭だけを袋の外へ出したり、中へ戻ったりしながら生活しています。
袋自体も非常によく伸びるため、かなり大きく成長した子どもでも中に入ることができます。
動物園では、袋から顔だけを出して周囲を見渡すかわいらしい姿を見ることができます。
ムキムキの筋肉

オスのカンガルーは、驚くほど発達した胸や腕の筋肉を持っています。
繁殖期になるとオス同士が立ち上がり、前足で殴り合ったり組み合ったりして強さを競います。

さらに、太いしっぽで体を支えながら両足で強力なキックを繰り出すこともあり、その姿はまるでキックボクサーのようです。
こうした力比べに勝ったオスほど繁殖の機会を得やすいため、大きく筋肉質な体つきへ進化したと考えられています。
5本目の脚になるしっぽ

カンガルーの長く太いしっぽは、ジャンプのためだけにあるわけではありません。
ゆっくり歩くときには、前足2本としっぽを地面につけ、しっぽを5本目の脚のように使って体を支えています。
また、オス同士のケンカでは、しっぽで全身を支えながら両足で相手を蹴り飛ばします。
しっぽは筋肉が非常に発達していて、カンガルーが生活するうえで欠かせない大切な体の一部なのです。
カンガルーの生態
何を食べるの?
カンガルーは草食動物で、イネ科の草を中心に、若葉や低い植物などを食べています。
牛やヒツジと同じように反すうを行い、一度飲み込んだ食べ物をもう一度口へ戻してかみ直すことで、植物から効率よく栄養を吸収しています。
乾燥した地域では水が少なくても生活できるよう、食べ物から水分を補う能力にも優れています。
群れで暮らす

カンガルーは「モブ」と呼ばれる群れを作って生活します。
群れの大きさは数頭から十数頭ほどですが、エサが豊富な場所では数十頭以上が集まることもあります。
群れで暮らすことで天敵を早く見つけることができ、危険が迫ると仲間同士で一斉に逃げ出します。
暑さをしのぐ工夫

オーストラリアの夏は40℃を超えることもあります。カンガルーは暑い昼間は木陰で休み、気温の低い朝夕に活動します。
また、前足をなめて唾液を蒸発させることで血液を冷やし、体温が上がりすぎるのを防いでいます。
赤ちゃんの誕生
カンガルーの妊娠期間は約36日と、とても短いことが特徴です。生まれたばかりの赤ちゃんは、体長約2cm、体重はわずか約1gしかありません。目は閉じたままで毛も生えておらず、とても未熟な状態です。
それでも赤ちゃんは本能だけを頼りに、お母さんのお腹をよじ登って育児のう(袋)の中へ入り、乳首に吸いついて成長を始めます。
生後6か月ほどになると袋から顔を出すようになり、外の様子を見たり草を食べる練習をしたりします。袋の外で過ごす時間は少しずつ長くなっていきます。
生後約10か月から1年半ほどで袋を卒業しますが、しばらくは危険を感じると袋へ戻ることもあります。お母さんに見守られながら少しずつ自立し、大人のカンガルーへと成長していきます。
カンガルーの天敵
カンガルーの主な天敵は、ディンゴです。
特に子どもや若い個体は狙われやすく、群れで周囲を警戒しながら生活しています。
危険を感じると大きなジャンプで逃げたり、水辺では天敵を水の中へ誘い込み、前足で押さえ込んで身を守ることもあります。

カンガルーを守るために
カンガルーの多くは現在も安定した個体数を保っています。しかし、一部の種類は開発による生息地の減少や交通事故などの影響を受けています。
オーストラリアの豊かな自然を守ることは、カンガルーだけでなく、多くの野生動物を守ることにもつながります。
まとめ
カンガルーは、お腹の袋で赤ちゃんを育てる有袋類ならではの特徴を持つ動物です。強力な後ろ足や5本目の脚のように使うしっぽ、発達した筋肉など、オーストラリアの自然の中で生き抜くための優れた体のつくりをしています。
動物園で観察するときは、ジャンプする姿だけでなく、しっぽの使い方や袋から顔を出す赤ちゃん、オス同士の体格の違いなどにも注目してみてください。きっと新しい発見があるでしょう。