クジラのなかま

クジラのなかまには、イッカクのほかにもシロナガスクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラ、シャチ、ベルーガ(シロイルカ)など、さまざまな種類がいます。
イッカクは、ベルーガと同じイッカク科に属するクジラのなかまで、北極海周辺の冷たい海にくらしています。
オスの頭から長く伸びる「牙」が最大の特徴で、まるで伝説のユニコーンのような姿をしています。この牙は角ではなく、上あごの歯が伸びたものです。
長いものでは3m近くになることもあり、昔のヨーロッパでは、この不思議な牙が「ユニコーンの角」だと信じられていたこともありました。
イッカク
クジラ目(鯨類) イッカク科 イッカク属
学名 Monodon monoceros
英名 Narwhal
- 体長 オス約4~5m メス約4m
- 体重 約800~1,600kg
- 分布 北極海周辺
- 生息地 北極海の海氷域、沿岸やフィヨルド
- 食べ物 魚、イカ、エビなど
イッカクは、北極海を中心にくらす中型のハクジラです。背びれがなく、丸みのある頭と短い胸びれを持っています。
成長すると体の色は白っぽくなり、頭や背中には黒いまだら模様が残ります。
イッカクの分布
イッカクは、カナダ北部、グリーンランド周辺、ロシア北極海など、北極海を中心に分布しています。
冬には海氷が広がる場所へ移動し、夏になると海岸近くの入り江やフィヨルドなどへ移動します。
海氷の状態に合わせて毎年長距離を移動することも、イッカクの特徴です。
【生息地】北極海・海氷域・沿岸の深い海
イッカクの特徴
体の大きさ
イッカクは、オスのほうがメスより大きくなる傾向があります。
オスは体長4~5mほど、体重は1,000kgを大きく超えることがあります。ずんぐりとした体に厚い脂肪をたくわえ、極寒の海でも体温を保てるようになっています。
長い牙は「歯」だった
イッカクといえば、頭から伸びる長い牙です。
実はこれは角ではなく、上あごの左側にある犬歯が伸びたものです。オスでは2~3歳ごろから左の歯が前方へ伸び始め、長いものでは約3mに達します。
メスの歯は歯ぐきの中にとどまることが多いですが、まれにメスにも牙が生えることがあります。さらに、非常にまれですが2本の牙を持つオスもいます。
牙には感覚がある
イッカクの牙は、ただ硬いだけの角ではありません。
内部には神経が通っていて、周囲の水の変化などを感じ取る感覚器官として働く可能性があります。
また、オス同士が牙を合わせる「タスキング」と呼ばれる行動も見られ、牙の長さなどを比べることで、お互いの強さや順位を確認していると考えられています。
背びれがない

多くのクジラには背中に背びれがありますが、イッカクには大きな背びれがありません。
背中には低い隆起があるだけです。
海氷が多い北極海では、背びれが氷にぶつかることを避けやすく、氷の下を泳ぐ生活にも適しています。
白と黒のまだら模様
子どものイッカクは灰色や茶色っぽい色をしています。
成長するにつれて白い部分が増え、成獣になると体の大部分が白っぽくなります。一方、頭や背中には黒いまだら模様が残ります。
イッカクの生態
何を食べるの?
イッカクは魚、イカ、エビなどを食べます。
海底近くで獲物を探し、口を使って水と一緒に吸い込むようにして捕まえます。
特に北極タラやホッキョクダラ、カレイのなかま、イカなどを食べています。
群れでくらす
イッカクは数頭から10頭ほどの群れをつくることが多く、季節によっては数百~数千頭が集まることもあります。
年齢や性別によって群れが分かれることもあり、海氷や食べ物の状況に合わせて移動します。
深い海にもぐる

イッカクは潜水がとても得意です。
海底近くまで深くもぐって魚やイカなどを探し、1,000mを超える深さまで潜ることがあります。NOAAによると、約1,200mの深さまで潜り、最大25分ほど水中にいることが確認されています。
赤ちゃんが生まれる
イッカクの妊娠期間は約13~16か月です。
メスは夏に1頭の赤ちゃんを産み、生まれたばかりの子どもは約1.6m、体重約80kgあります。
母親の母乳を飲みながら成長し、少なくとも1年以上授乳を受けます。
イッカクの天敵
イッカクの天敵には、ホッキョクグマやシャチなどがいます。
特に海氷が多い場所では、氷の割れ目や呼吸のための穴がふさがれてしまい、逃げ場を失うことがあります。
そのため、海氷の状態はイッカクの生存に大きく関係しています。
イッカクの寿命
イッカクは少なくとも25年ほど生きることが確認されており、50年近く生きる個体もいると考えられています。
イッカクを守るために
イッカクは、北極海の海氷に強く依存して生活しています。
近年は地球温暖化による海氷の減少が大きな問題となっているほか、船の往来や海洋汚染、狩猟なども影響しています。
北極の環境を守り、イッカクが安心してくらせる海を残していくことが大切です。
まとめ
イッカクは、北極海の冷たい海でくらす不思議なクジラです。
最大の特徴である長い牙は角ではなく歯が伸びたもので、感覚器官としての役割や、仲間同士の順位を確認するために使われていると考えられています。
また、深く潜る能力や海氷の下を泳ぐ体のつくりなど、厳しい北極の環境で生活するための特徴をたくさん持っています。
昔は「ユニコーンの角」と考えられていたイッカクの牙。その不思議な姿だけでなく、北極の海で生きるための体のしくみにも注目してみてください。